答えを教えないAIにする。授業で使える"ヒント型プロンプト"の作り方
AIを使うと、子どもが考えなくなるのか
AIがすぐ答えを出すなら、子どもは考えなくなるのではないか。
宿題も、調べ学習も、感想も、AIに聞けば終わってしまうのではないか。
これは、自然な不安です。
でも、問題はAIそのものだけではありません。
「どう使うか」です。
答えをもらう使い方にすれば、考える時間は減ります。
一方で、ヒントをもらいながら自分で考える使い方なら、考える工程を残せます。
同じAIでも、頼み方で、子どもに残る思考が変わります。
今回は、その「頼み方」の話です。
なお、この記事は「教育向けAIを学校現場に翻訳するシリーズ」の4本目です。
これまで、ガイド付き学習、授業後の立て直し、使う前に決める3つのことを書いてきました。
今回は、実際に「考えさせるAI」にするための、ヒント型プロンプトを紹介します。
授業で大事なのは”答えを出させない設計”
授業でAIを使うなら、まず決めたいことがあります。
「答えを出させるか」。
「考える余地を残すか」。
AIに「答えを教えて」と聞けば、答えが返ってきます。
でも、授業では、それだけでは困る場面があります。
子どもが考える前に、答えが出てしまうからです。
だから、先生がAIに頼むときは、最初にこう入れます。
「答えは直接教えないでください」。
そのうえで、条件を足していきます。
「子どもが自分で考え直せるように」。
「ヒントを段階的に」。
「小学生に伝わる短い言葉で」。
ねらいは、ひとつです。
AIを、答えの自動販売機にしないこと。
ヒント型プロンプトの基本形
まずは、基本の形です。
小学校◯年生の【教科・単元名】の学習です。
子どもが次の内容でつまずいています。
【子どもの考え・発言・ノートの一部】
答えを直接教えないでください。
子どもが自分で考え直せるように、
ヒントを3段階で出してください。
条件は次の通りです。
・1つ目は、問題や資料を見直すヒント
・2つ目は、前に学んだこととつなげるヒント
・3つ目は、式、図、本文、実験結果などに戻るヒント
・それでも分からない場合だけ、考え方の流れを説明する
・小学校◯年生に伝わる短い言葉にする
ポイントは、4つです。
1.答えを直接教えない。
2.ヒントを段階に分ける。
3.学習対象に戻す。
4.子どもに伝わる言葉にする。
この4つが入っていれば、AIは「考えさせる相手」になります。
ここから、教科ごとの例を見ていきます。
算数の例。割合で”何を求めているか”に戻す
小学校5年生の算数「割合」です。
小学校5年生の算数「割合」の学習です。
問題:
定価800円の本が、20%引きで売られています。
代金はいくらですか。
子どもは、
800×0.2=160
答えは160円
と考えています。
答えを直接教えないでください。
子どもが自分で考え直せるように、
ヒントを3段階で出してください。
条件は次の通りです。
・1つ目は、160円が何を表しているかを考えるヒント
・2つ目は、20%引きの意味を考えるヒント
・3つ目は、最終的に払う金額が800円より小さくなることに気づくヒント
・小学校5年生に伝わる短い言葉にする
ここで大事なのは、「答えは640円です」と教えないことです。
そうではなく、こう戻します。
「160円は、何の金額かな」。 「20%引きは、20%分を払うという意味かな」。 「払う金額は、800円より大きくなるかな、小さくなるかな」。
答えではなく、「何を求めているのか」に戻す。
そこに、子どもの思考が残ります。
ちなみに、回答はこんな感じ。
これを提示しても、言葉で伝えても使えますね。
国語の例。「ごんぎつね」で本文に戻る問いを出す
小学校4年生の国語「ごんぎつね」です。
小学校4年生の国語「ごんぎつね」の学習です。
子どもが、
「ごんはかわいそうだと思いました」
と書いています。
答えを直接教えないでください。
子どもが本文の言葉にもどって考えられるように、
ヒントを3段階で出してください。
条件は次の通りです。
・1つ目は、どの場面のごんを見ているのかを考えるヒント
・2つ目は、ごんの行動や気持ちが分かる本文の言葉を探すヒント
・3つ目は、兵十がごんに気づいた場面とつなげるヒント
・正解を一つに決めすぎない
・小学校4年生に伝わる短い言葉にする
ここでは、「かわいそう」で止めないことが大事です。
子どもの考えを、否定しません。
そのうえで、本文の叙述に戻って、根拠を探せるようにします。
「どの場面のごんかな」。 「その気持ちが分かる言葉は、どこかな」。
感想を、本文の言葉につなぎ直す。
それが、国語の読みになります。
回答はこんな感じ。
理科の例。6年生「水溶液の性質」で実験結果に戻る
小学校6年生の理科「水溶液の性質」です。
小学校6年生の理科「水溶液の性質」の学習です。
子どもが、
「塩酸にアルミニウムを入れると、とけて見えなくなったので、アルミニウムはなくなったと思います」
と考えています。
答えを直接教えないでください。
子どもが実験結果にもどって考えられるように、
ヒントを3段階で出してください。
条件は次の通りです。
・1つ目は、アルミニウムを入れたときに見えた変化を思い出すヒント
・2つ目は、液を蒸発させたときに何が残るかを考えるヒント
・3つ目は、「見えなくなった」と「なくなった」は同じかを考えるヒント
・実験結果をもとに考えられるようにする
・小学校6年生に伝わる短い言葉にする
ここでは、「見えない=なくなった」と考えやすいところを、実験結果に戻します。
答えを教えるのではありません。
こう戻します。
「何を観察したかな」。 「蒸発させると、どうなったかな」。 「見えなくなることと、なくなることは、同じかな」。
実験結果にもどると、子どもは自分で考え直せます。
回答はこちら。
ヒント型でも、先生の見取りは必要です
ヒント型プロンプトを使っても、AIに任せきりにはしません。
AIが出したヒントが、その子に合っているとは限りません。
言葉が、難しいこともあります。 単元のねらいと、少しずれることもあります。
だから、先生が見る必要があります。
子どもが、どのヒントで考え直せたのか。 どこで、また止まったのか。 自分の言葉で、説明できたのか。
ここを、先生が見取ることが大切です。
AIは、先生の代わりではありません。
子どもが考え続けるための、足場を増やす道具です。
まとめ
AIを使うと子どもが考えなくなるのでは、という不安は自然です。
でも、問題はAIそのものだけではなく、どう使うかです。
答えをもらう使い方にすると、考える時間は減ります。
ヒントをもらう使い方なら、考える工程を残せます。
プロンプトでは、「答えを直接教えない」と入れる。 ヒントを段階的に出してもらう。 問題、本文、実験結果に戻る問いを出してもらう。 そして、最後は先生が見取る。
プロンプトは、AIをうまく動かす呪文ではありません。
子どもにどんな思考を残したいのかを、先生が言葉にするものです。
AIに答えを出させることはできます。
でも、授業では、あえて答えを出させないことも大切です。
子どもがもう一度考える。 本文にもどる。 実験結果を見直す。 前に学んだこととつなげる。
そのために、AIからヒントをもらう。
そんな使い方なら、生成AIは、子どもが考え続けるための足場になります。
学校現場で使える生成AI活用を、これからも具体的に発信しています。
AIを使うことそのものより、 「子どもが何を学ぶのか」 「先生がどう見取るのか」 「人間がどこで考えるのか」 を大切にしています。
Geminiや教育向けAIの使いどころも、現場の言葉で少しずつ整理していきます。
私は現役の小学校教員をしながら、AI活用について発信しています。同じような立場の方や、AIを仕事・学びに活かしたい方に届けばうれしいです。
記事を読む時間がない人は、ながら聴きできるSpotifyでお楽しみください。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!





