AI活用で問われるのは、子どもの主体性を支えられるか
GoogleがClassroom・Gemini・NotebookLMを一体化させた
Googleが、教育現場向けのAI統合を発表しました。
Classroomアプリ、Gemini、NotebookLM、Chromebookが、ひとつのエコシステムとしてつながっていきます。
(参考:Google、教育現場におけるAI統合を本格加速 Classroom・Gemini・NotebookLMを一体化)
先生が課題や教材をGeminiに渡すと、それを「文脈」として理解してくれる。 児童が学習ノートに取り組めば、理解の抜けを診断して、次のレッスンをすすめてくれる。 Classroom全体の学習アナリティクスも整備されつつあります。
便利になっていくことは、間違いありません。 でも、便利さの話だけで終わらせたくないと思いました。
Googleを批判したいわけではない
この記事を読んで、まず思ったのは、Googleのやり方が悪いという話ではない、ということです。
新しい機能が出てくるのは、自然なことです。 先生の負担を減らし、児童の理解を助ける仕組みは、ありがたいものです。
問題は、機能そのものではありません。 その機能を、誰がどう使うかです。
同じAIツールでも、使い方によって、まったく違う授業になります。 先生が児童を管理する道具にもなれば、児童が自分の学びを進める道具にもなります。
「生徒エージェンシー」という考え方
ここで、ひとつの教育理論を紹介します。
OECDが2019年に発表した「ラーニング・コンパス2030」という学習の枠組みがあります。 その中心にあるのが、「生徒エージェンシー(student agency)」という概念です。
生徒エージェンシーとは、変革を起こすために、自分で目標を設定し、振り返り、責任をもって行動する力のことです。
羅針盤という比喩が使われているのには、理由があります。 生徒が、先生の決まりきった指示をそのまま受け入れるのではなく、自分自身で進むべき道を見出す必要がある。 そのことを強調するためだそうです。
これは、まさに「先生の手のひらで転がされない学び」の話です。
ただし、ひとりで進む話ではない
ここで、大事な補足があります。
OECDは、「生徒エージェンシーは、生徒による自治や、自由な選択だけを意味するものではない」と、はっきり書いています。
人は、社会的な関係性の中で、エージェンシーを学び、育んでいく。 だから、生徒が仲間や教師、家族、コミュニティに囲まれ、その人たちと相互作用しながら学んでいく姿が大事だとされています。
これを、「共同エージェンシー(co-agency)」と呼びます。
つまり、「先生が主導するか」「児童が主導するか」の二択ではありません。 先生は、児童の主体性を支える伴走者として関わり続ける。 そういう関係性が、理想として描かれています。
日本の教育でも、近い整理がある
日本の教育心理学にも、近い考え方があります。
溝上慎一氏は、主体的な学習を三層で捉えています。 興味・関心で取り組む「課題依存型」。 目標設定やメタ認知を使って自分を方向づける「自己調整型」。 人生の目標やウェルビーイングを見据える「人生型」。
上に行くほど、学習そのものとエージェンシーが深まっていく、という考え方です。
文部科学省が進める「個別最適な学び」も、この自己調整学習の考え方と結びついています。 児童が、自分の学習方法を振り返り、調整しながら、目標に向かっていく。 そういう学びが、今の教育政策の方向性です。
この視点で、Googleの機能を見直してみる
この「共同エージェンシー」という軸で、あらためてGoogleの発表を見直してみます。
「制御(コントロール)」というセクションでは、終始、「先生が学習の設計者であり評価者である」という立場が強調されていました。 Chromebookで児童の画面を特定の教材にロックする機能なども、先生側の管理を強める方向の機能です。
これは、共同エージェンシーというより、先生主導の色が強い設計です。 使い方によっては、児童の主体性を狭めてしまう可能性もあります。
一方で、「文脈」の部分で紹介されていた使い方は、少し違います。 児童自身が学習目標を入力して、Study Notebooksに取り組む。 自分の理解の抜けを、自分で把握していく。
ここには、児童が自分の学びに関わっていく余地があります。 先生が一方的に管理するのではなく、児童と一緒に進めていく余地です。
大事なのは、機能ではなく設計
同じAIツールでも、先生の設計次第で、まったく違う授業になります。
画面をロックして、決められた教材だけをやらせる。 これは、先生主導の使い方です。
児童が自分で目標を立て、自分の理解の状態を確認しながら、次に何をするか選んでいく。 これは、児童のエージェンシーを支える使い方です。
どちらの使い方も、同じAIツールでできてしまいます。 だからこそ、先生が「どう使うか」を意識することが、これまで以上に大事になっていくのだと思います。
まとめ
GoogleがClassroom・Gemini・NotebookLMを一体化させたことは、AIが学習をより細かく支えていく流れを示しています。
これは、Googleが良い悪いという話ではありません。
大事なのは、そのツールを使って、先生が児童をどう位置づけるかです。 先生が管理する対象として使うのか。 児童が自分の学びを進めるための道具として使うのか。
OECDの「生徒エージェンシー」や「共同エージェンシー」という考え方は、そのヒントになります。 児童は、ひとりで学ぶわけではありません。 先生や仲間との関係性の中で、自分の学びを進めていく存在です。
AIが学習を支える時代だからこそ、先生の役割は、児童の主体性を支える伴走者であることだと、あらためて感じました。
私は現役の小学校教員をしながら、AI活用について発信しています。同じような立場の方や、AIを仕事・学びに活かしたい方に届けばうれしいです。
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました!


いつも鮮度の良い情報をありがとうございます。
今のAIの発展の勢いだと教師の仕事が、生徒に伴走することを飛び越えて、AIが生徒に伴走するのを監督、管理するくらいまでいきそうな気がする…まだまだ先と思っていると危ない〜💦